歯間ブラシVSフロス:EFPガイドラインが示す本当の推奨とその理由

歯間ブラシorフロスに決着を付けたい歯間ブラシの歯医者さんです!

私の臨床実感としては、フロスをしていても歯肉に炎症がある(歯周病と診断)患者さんがたくさんいます。

そういった方でも正しい歯間ブラシの方法を習得することで歯肉の炎症は改善します。

フロスを一生懸命やっているのに、歯間ブラシでの出血に驚く方は珍しくありません。

こういった現状を踏まえるとフロスよりも歯間ブラシが世間で広まった方が良いのではないかと思うわけです。

ガイドラインの結論:第一選択は歯間ブラシ

日本では「歯と歯の間はフロス」と紹介されることが多く、テレビCMや雑誌でもフロスが強調されがちです。ところが、ヨーロッパ歯周病学会(EFP)のS3レベル臨床ガイドライン(Sanz et al., 2020)では、**歯周病治療やメンテナンス患者における第一選択は歯間ブラシ(Interdental Brushes, IDB**であると明確に推奨しています。

ガイドラインの推奨文では、

「解剖学的に可能であれば、歯ブラシに加えて歯間ブラシを使用することを推奨する」(Grade A, 強い推奨)
とし、さらに
「歯間ブラシはフロスよりも有意に高い清掃効果がある。ネットワークメタ解析でも歯間ブラシが第一選択であることが示された」
と結論づけています。

この推奨は、4つのRCT(290人の患者)による7つの比較試験から得られたデータに基づいており、歯間ブラシが歯周病メンテナンス患者のプラーク除去および歯肉炎症改善において、フロスよりも明らかに効果的であることが示されています。

歯間ブラシが優れる理由とエビデンス

歯間ブラシの最大の特徴は、毛先が歯の側面や歯肉縁下(歯ぐきの中)に入り込みやすく、バイオフィルムを効果的に除去できることです。特に歯周病で歯ぐきが下がり、歯間が広くなった部位では、フロスの糸が触れにくい領域までしっかり届きます。

歯と歯肉の構造、特に歯間部の形態を見れば、フロスでは歯間部を清掃することが困難なのがよく分かります。

ガイドラインでは、

  • 患者の歯間形態に合わせたブラシサイズの選定
  • 専門家による正しい使用方法の指導
  • 不適切使用による外傷予防(中程度の外傷リスクあり)
    が重要であるとしています。

一方でフロスは、歯間が非常に狭い健康な歯列や矯正中の部位には有効ですが、歯周病の既往がある患者や歯間が広がった部位では清掃効果が劣ります。このため、ガイドラインでは

「歯周病メンテナンス患者における第一選択としてフロスを推奨しない」(Grade B, 弱い推奨)
としています。

さらに患者嗜好調査では、歯間が開いている患者の多くがフロスより歯間ブラシを好むことも報告されています。

臨床での使い分けと実践的アドバイス

歯間ブラシとフロスは「どちらか一方だけが正しい」というわけではなく、口腔内の状態に応じて使い分けることがベストです。

  • 歯間が広い部位:歯間ブラシを第一選択に。プラーク除去率が高く、炎症改善にも有効。
  • 歯間が狭い部位や接触点:フロスが有効。特に隣接面のむし歯予防にも適しています。

使用時の注意点として、歯間ブラシはサイズ選びが重要です。大きすぎると歯ぐきを傷つけ、小さすぎると清掃効果が落ちます。また、フロスは糸を歯の側面に沿わせる「C字型操作」を徹底しないと、汚れをこすり落とせません。

私は基本的に歯周病に関しては歯間ブラシの指導しかおこないません。

どうしても歯間ブラシが通らない場所だけ、仕方がないからフロスを使ってくださいというような説明です。

患者さんのよくある質問(フロスor歯間ブラシ)

Q. 歯周病治療中ですが、フロスだけで十分ですか?
A. ガイドラインでは歯間ブラシを第一選択としています。フロスのみでは清掃が不十分な場合があります。特に歯周病治療であるなら歯間ブラシの使用は必須だと考えます。

Q. 歯間ブラシを使うと出血します。やめるべきですか?
A. 出血は炎症のサインです。正しく使い続ければ、数日〜1週間程度で改善することが多いです。

Q. フロスと歯間ブラシ、両方使うべきですか?
A. 歯周病治療の観点では歯間ブラシの使用をオススメします。どうしても歯間ブラシが通らない場所だけフロスを推奨することがあります。もちろん両方使うのが良いのですが、優先順位はガイドラインからも分かるように歯間ブラシにあります。


まとめ
EFPガイドラインは、歯周病予防・治療において歯間ブラシを第一選択とし、その効果はフロスを上回るとしています。日本ではまだフロス推奨が多いですが、科学的根拠に基づけば、患者さんの口腔状態に応じて適切に使い分けることが最も重要です。

日本のセルフケアグッズ市場ではなぜかフロスばかりに注目がいっていますが、国民の8割が歯周病であるならば歯間ブラシにもっとフォーカスを当てるべきです

歯科医院や歯科医療従事者からの発信でも歯周病にはフロス!歯間清掃にはフロス!という発信ばかりです。

歯間ブラシを使用すれば明らかにフロスよりも歯間ブラシが重要であることに気づくはずです。

歯間ブラシの歯医者さんはフロスよりも歯間ブラシ!!!ということを患者さんにも、歯科医療従事者にも発信していきたいと思います。


参考文献

  • Sanz M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis. The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020;47(S22):4–60.
  • Slot DE, et al. The efficacy of interdental brushes compared to dental floss. Int J Dent Hyg. 2020.

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